三方よしは近江商人の経営哲学であり、現代でも経営理念に据えている企業があります。
三方よしは「買い手よし、売り手よし、世間よし」で、自社の儲けだけでなく顧客の利益や社会貢献も考えて経営することが大切です。
三方よしは企業の社会的責任や環境への配慮などのSDGsとも連動しているため、自社でも取り入れるべき考え方です。
この記事では、三方よしの意味や企業が三方よしを取り入れる方法、成功事例などを説明します。
三方よしとは?
三方よしとは、近江商人の経営理念として知られる考え方です。
売り手よし・買い手よし・世間よしの3つの「よし」を実現することを目指すものです。
売り手である企業が適正な利益を得ると同時に買い手である顧客が商品やサービスに満足し、取引を通じて社会全体にも良い影響を与えるという理想的な商売の在り方を表しています。
三方よしの精神は、ビジネスにおける長期的な信頼関係の構築と持続可能な成長を実現するための指針として、今日でも高い価値を持っています。
1. 買い手よし
買い手よしは顧客満足を重視する姿勢を表しています。
顧客ニーズの充足 | 単に安いだけでなく、品質や機能性などの顧客が求めるものを提供 |
適正価格 | 最安値である必要はなく、顧客が納得できる価格 |
多様な価値観への対応 | 顧客層によって異なるニーズや価値観に合わせた対応 |
長期的な関係構築 | リピーターの獲得や口コミによって新規顧客を獲得 |
透明性と誠実さ | 商品やサービスに関する情報を開示 |
買い手よしの実現には顧客の要望に応えるだけでなく、顧客にとって本当に価値のあるものを提供し、互いに利益を得られる関係を構築することが重要です。
買い手よしが実現すると、持続可能なビジネスモデルが確立し社会全体の発展につながります。
2. 売り手よし
売り手よしは、ビジネスにおいて売り手である企業や事業者が適切な利益を得て、持続可能な経営を実現することです。
適正な利益の確保 | 適正な利益を確保することで、企業は長期的に事業を継続・成長できる |
健全な労働環境 | 企業全体の士気が高まり、生産性の向上につながる |
商品・サービスの質の向上 | 質の高い商品・サービスを提供すれば、顧客満足度が向上し、企業の評判と利益につながる |
長期的な企業価値の向上 | 長期的な視点を持ち、一時的な利益に惑わされず安定した経営基盤を築く |
自社の強みの理解と活用 | 自社の強みを活かすことで市場での地位を確立し、安定した利益を得られる |
売り手よしは単に利益を追求するだけでなく、企業の持続可能性や従業員の福祉、商品・サービスの質、自社の強みの活用など、多面的な要素を含む概念です。
以上の要素をバランス良く実現することで売り手よしが達成され、買い手よし・世間よしにもつながります。
3. 世間よし
世間よしは、ビジネスが社会全体にもたらす利益や貢献を指す重要な概念です。
地域社会への貢献 | ・地域経済の活性化 ・雇用創出 ・地域文化の保護と発展 |
環境への配慮 | ・環境負荷の低減 ・持続可能な資源利用 ・生態系の保護 |
社会問題の解決 | ・貧困対策 ・教育支援 ・健康 ・福祉の向上 |
企業の社会的責任 | ・ステークホルダーとの良好な関係構築 ・企業の透明性の向上 ・社会的価値と経済的価値の両立 |
イノベーションの促進 | ・社会ニーズに応える商品の開発 ・社会的課題をビジネスチャンスとして捉える視点 ・オープンイノベーションの推進 |
世間よしの実践は、企業が社会の一員としての責任を果たし、持続可能な発展に貢献します。
世間よしは慈善活動ではなく、ビジネスの本質的な部分として捉えられるべきであり、企業の長期的な成功と社会の繁栄を同時に実現する要素です。
三方よしを説いた近江商人の商売十訓
近江商人の商売十訓は、長年受け継がれてきた商売の知恵と倫理をまとめた教えで、商売十訓の中には三方よしの精神が反映されています。
「商売は世のため、人のための奉仕にして、利益はその当然の報酬なり」は商売が社会貢献(世間よし)につながるべきという、三方よしの根本的な考え方を表しています。
「売る前のお世辞より売った後の奉仕、これこそ永遠の客つくる」は、買い手よしの精神を表し、顧客満足を重視する姿勢を示す訓です。
「無理に売るな、客の好むものを売るな、客のためになるものを売れ」は顧客ニーズに応えることの重要性を説いています。
「良きものを売るのは善なり、良き品を広告して多く売ることはさらに善なり」では、良い商品を提供することで買い手よしを実現し、それを広めることで世間よしにもつながるという考えを示しています。
企業が三方よしを取り入れる手順5ステップ
三方よしを取り入れる方法を説明します。
三方よしを理念に含めるだけでなく、実践することが大事です。
1. 企業理念を浸透させる
三方よしの要素が含まれた企業理念を浸透させるには、経営陣が率先して理念を体現し、定期的にメッセージを発信することが重要です。
従業員へ企業理念を浸透させるには、日常的に企業理念を意識できる環境や教育が必要です。
理念の浸透は時間がかかるため、粘り強く取り組みましょう。
定期的にアンケートやフィードバックを行い、浸透度を調査する必要があります。
2. 自社や市場の分析をする
自社や市場を分析する方法として、SWOT分析を活用することが効果的です。
SWOT分析は、企業の内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)を体系的に整理する手法です。
強み | 売り手よしの視点から自社の競争優位性や独自の価値提供能力を分析 |
弱み | 売り手よし・買い手よしの観点から改善が必要な領域を特定 |
機会 | 買い手よし・世間よしの視点から市場や社会のニーズを分析 |
脅威 | 三方よしの実現を阻害する可能性のある外部要因を特定 |
SWOT分析を通じて自社の強みを活かしつつ弱みを補完し、市場機会を捉えながら脅威に対処する戦略を立案できます。
競合調査を進める方法は?調査項目やフレームワークも解説3. ターゲットを設定する
ターゲットを設定するにはセグメンテーションを行い、自社の価値提供が最適なグループを特定します。
セグメントの中にいる顧客のニーズに合致し、社会に良い影響を与えられる自社の強みを見つけましょう。
顧客との継続的なコミュニケーションや価値提供ができるセグメントを選ぶことが大事です。
顧客だけでなく、従業員や取引先、地域社会などの視点も取り入れ、すべてのステークホルダーにとって価値のあるターゲット設定を目指します。
4. 顧客分析を行う
顧客分析に役立つ手法を3種類紹介します。
セグメンテーション分析 | 各セグメントの特徴や傾向を分析し、三方よしの観点から最適なアプローチを検討 |
RFM分析 | 優良顧客や潜在的な優良顧客を特定し、それぞれに適した買い手よしの施策を検討 |
カスタマージャーニー分析 | 買い手よし・世間よしの視点から、各段階での改善点や新たな価値提供の機会を特定 |
分析結果をもとに具体的な改善策や新たな取り組みを検討し、三方よしの理念を実践していくことが重要です。
5. 分析結果をもとに商品を開発する
顧客ニーズの深掘り(買い手よし)と社会的価値の創造(世間よし)、持続可能なビジネスモデルの構築(売り手よし)を意識した商品コンセプトを策定します。
3つの要素を同時に実現する商品を開発すれば、短期的な利益だけでなく、長期的な価値創造を目指せます。
商品の市場投入後も三方よしの観点から定期的に評価を行い、継続的な改善を図りましょう。
三方よしに取り組んでいる企業の成功事例5選
三方よしに取り組んでいる企業の成功事例を5種類紹介します。
現代では、三方よしは企業の社会的責任やサステナビリティ経営の先駆けとして再評価されており、多くの企業が経営理念に取り入れています。
1. 伊藤忠商事株式会社
伊藤忠商事は創業以来三方よしの理念を大切にしており、2020年4月からは正式に経営理念として掲げました。
世間よし・買い手よしの実践として、ITOCHU SDGs STUDIOというSDGsの普及啓発を目的としたコミュニケーションスペースを開設し、人々がSDGsについて学び、考える機会を提供しています。
環境や人権に配慮した持続可能な材料の調達や、再生可能エネルギー事業などの環境ビジネスにも積極的に取り組んでいます。
2. 湘南美容クリニック
湘南美容クリニックは「究極の三方良し」を経営理念として掲げています。
買い手に対しては従来業界で示されていなかった料金体系を透明化し、顧客からの信頼を獲得しました。
従業員には2カ月に1回、全社員参加の理念研修を行い経営理念の浸透を図っています。
医学振興財団を設立し形成外科学の研究支援を通じて医学の発展に貢献したり、経済的理由で進学が困難な学生向けに奨学金制度を設立したりしています。
3. 伊藤園
伊藤園は発信型三方よしを実践しています。
茶産地育成事業では、安定的で高品質な茶葉の調達や契約農家からの全量買い取り、耕作放棄地などを利用した茶園造成で三方よしを実現しています。
全国各地の環境課題に対して支援を行う「お茶で日本を美しく。」キャンペーンなどの良い取り組みを積極的に発信することで、社会からの評価を高めて価値創造につなげています。
4. サントリー
サントリーは「利益三分主義」という理念を通じて、三方よしの精神を実践しています。
被災地支援として「サントリー東北サンさんプロジェクト」や「サントリー水の国くまもと応援プロジェクト」を実施したり、水源涵養活動「天然水の森」を展開したりしています。
自社の利益追求だけでなく、取引先や社会全体の利益も考慮した経営を行い、事業で得た利益を事業への再投資・得意先や取引先へのサービス・社会への貢献に役立てています。
5. ラーニングエッジ株式会社
ラーニングエッジ株式会社は絆徳の経営スクール(MBS)を通じて、多くの経営者に三方よしのマーケティング手法を教育し、受講企業の成長を支援しています。
「究極の三方よし」を掲げる湘南美容クリニックの相川代表も、ラーニングエッジの講座でマーケティングを学び、20年で年商1,600億円という飛躍的な成長を実現しました。
日本の経営者だからこそ実践しやすい、お客さまに愛されながら長期的に利益を伸ばせるマーケティングをお伝えしています。
6万人以上の経営者・個人事業主が受講しているマーケティング講座を体験したい方は、ぜひ無料セミナーにご参加ください。
三方よしはSDGsにもつながる考え方
三方よしは、現代のSDGsにも通じる重要な理念です。
「売り手よし、買い手よし、世間よし」という三方の利益を追求することは、SDGsの経済・社会・環境の調和とも合致します。
企業が短期的な利益だけでなく、顧客満足と社会貢献を同時に実現することは不可欠です。
三方よしの実践は、企業の持続可能性を高めてステークホルダーとの信頼関係を構築し、社会課題の解決にも貢献します。
三方よしは、グローバルな持続可能性の実現に向けた重要な指針となるでしょう。
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