コラム 
経営戦略を策定する際、フレームワークを使うと効率的かつ客観的にデータを分析できます。
経営戦略を立案するために活用できるフレームワークは数多くあるため、目的や事業内容に合わせて選択し、特徴や限界を理解して使用しましょう。
どれを使えばいいか迷う経営者のために、経営戦略フレームワーク16種類を策定の5シーンに分けて紹介するとともに、活用のメリットと注意点も解説しますので参考にしてください。
経営戦略立案にフレームワークを使うメリット
フレームワークを使うことで、経営戦略の立案は効率的で論理的になり、組織全体で共通認識を持って戦略を進められます。
1. 効率的に思考できる
フレームワークは何を・どの順番で・どのように考えるかが定められているため、何から手をつければよいか迷わずに済み、思考時間を短縮できます。
複数の選択肢や解決策を洗い出し、データや根拠に基づいた比較が可能で、無駄な思考や検討の重複を避けられます。
効率的に必要な情報を収集・整理できるため、短時間で質の高い意思決定が可能です。
2. 客観的に分析できる
フレームワークでは主観や経験だけに頼らず、データや論理に基づいた分析ができます。
複雑な情報を体系的に分類・整理できるため、直感や個人のバイアスを排除しやすく、誰が分析しても同じ基準で評価できる仕組みです。
フレームワークによる分析はその戦略に至った理由を客観的なデータや論理で説明できるため、ステークホルダーからの信頼も得やすくなります。
3. 組織内での認識を統一できる
フレームワークを用いることで、複数の関係者が共通の基準や視点で議論できるため、認識のズレを減らし、統一した戦略策定が可能です。
フレームワークでは考えるべきことや検討の順番がわかりやすく、思考や議論がバラバラになるのを防げます。
異なる意見や視点を統合しやすく、組織全体で一貫性のある戦略を策定しやすくなります。
経営戦略策定で役立つフレームワーク16選と使う順番
経営戦略策定で役立つフレームワークを使う場面ごとに16種類紹介します。
1. 状況分析
状況分析のフレームワークは目的や分析対象に応じて使い分けたり、複数を組み合わせたりすることで、多角的で客観的な分析が可能です。
SWOT分析
SWOT分析は以下の4要素で内部・外部環境を整理し、現状把握と戦略立案に活用するフレームワークです。
- 強み（Strength）
- 弱み（Weakness）
- 機会（Opportunity）
- 脅威（Threat）
SWOT分析を行うことで自社の強みを活かした成長戦略や、弱みを補う改善策、市場の機会を捉える施策、脅威に備えるリスク管理策などの戦略を導き出せます。
PEST分析
PEST分析はマクロ環境要因から外部環境を分析します。
- 政治（Political）
- 経済（Economic）
- 社会（Social）
- 技術（Technological）
4つの要素ごとに情報を収集・分類し、それぞれの要因が自社にとって機会か脅威かを整理して分析します。
企業や事業が長期的に成長・存続するために、外部環境の変化やトレンドを把握し、将来の機会や脅威を見極めることが大事です。
3C分析
3C分析は3つの視点から市場環境を分析し、自社の立ち位置や戦略の方向性を明確にします。
- 顧客（Customer）
- 競合（Competitor）
- 自社（Company）
新規事業立ち上げや事業戦略の見直し、撤退などの経営判断の場面で活用します。
3C分析を行うことで抜け漏れなく情報を整理でき、効率的に現状把握や課題発見が可能です。
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ファイブフォース分析
ファイブフォース分析は、業界の競争環境を5要素で分析するフレームワークです。
- 業界内の競合
- 新規参入の脅威
- 代替品の脅威
- 買い手の交渉力
- 売り手の交渉力
業界全体の構造や収益性、競争要因を客観的に把握し、自社の競争優位性や課題、戦略的な意思決定に役立ちます。
4P分析
4P分析は4つのマーケティング要素から自社の提供価値を整理します。
- 製品・サービス（Product）
- 価格（Price）
- 流通（Place）
- 販促活動（Promotion）
4つの視点から自社製品やサービスのマーケティング施策を整理し、ターゲット市場に対して最適なマーケティングミックスを立案します。
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VRIO分析
VRIO分析は経営資源の4つの観点から、自社の持続的競争優位性を評価します。
- 価値（Value）
- 希少性（Rarity）
- 模倣困難性（Imitability）
- 組織（Organization）
VRIO分析の結果は経営戦略や成長戦略の方向性を決める判断材料になるため、社内の意思決定やリソース配分にも役立てられます。
STP分析
STP分析は顧客や市場ニーズを整理し、自社の狙うべき市場や立ち位置を明確にできます。
- セグメンテーション（Segmentation）
- ターゲティング（Targeting）
- ポジショニング（Positioning）
新規事業の立ち上げや既存事業の見直し、商品開発、プロモーション戦略の策定など、幅広いマーケティング活動で活用されます。
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バリューチェーン分析
バリューチェーン分析は企業の事業活動を一連のプロセス（価値連鎖）として捉え、どこで付加価値が生まれているかを分析します。
| 主活動（Primary Activities） | ・購買物流 ・製造 ・出荷物流 ・販売 ・マーケティング ・サービス |
| 支援活動（Support Activities） | ・全般管理 ・人事 ・労務管理 ・技術開発 ・調達 |
コスト構造や非効率な部分を特定し、改善やコスト削減の方針を立てやすくします。
他社のバリューチェーンと比較することで、自社の競争優位性や差別化ポイントを発見できます。
2. 目標設定
目標設定のためのフレームワークは目標を明確にし、達成までの道筋を具体化するのに役立ちます。
SMARTの法則
SMARTの法則は、目標を5つの観点で明確にするフレームワークです。
- 具体的（Specific）
- 測定可能（Measurable）
- 達成可能（Achievable）
- 関連性がある（Relevant）
- 期限がある（Time-bound）
5つの基準を満たした目標を設定することで行動が明確になり、進捗管理や評価がしやすくなります。
SMARTの法則は目標管理や業績評価、プロジェクト推進などで活用されています。
KPIツリー
KPIツリーとは最終目標（KGI）から逆算し、達成に必要な中間指標（KPI）を樹形図で階層的に分解して設定する方法です。
KGIと各KPIの関係性が可視化されるため、各業務や施策が最終目標にどうつながっているかが明確になります。
どのKPIが未達かを見れば、どこに課題があるかがすぐにわかり、改善策を立てやすいのが特徴です。
OKR
OKRは大きな目標（Objective）と、定量的に評価する複数の主要な成果指標（Key Results）をセットで設定する方法です。
OKRでは現状よりも高い目標（ストレッチ目標）を掲げるため、60〜70％の達成率でも成功とみなされます。
企業→部署・チーム→個人の順でOKRを設定するため、企業やチームの方向性を揃えられます。
3. 戦略策定
競争戦略や成長戦略を決定する際に役立つフレームワークを説明します。
フレームワークを組み合わせることで、状況分析の結果を踏まえた競争戦略・成長戦略の選択が可能です。
ポーターの3つの基本戦略
マイケル・ポーターが提唱した3つの基本戦略は、企業が競争優位を築くための代表的なフレームワークです。
- コスト・リーダーシップ戦略
- 差別化戦略
- 集中戦略
自社の強みや市場環境に応じて、3つのうちどれか1つに絞って徹底的に実行することが重要です。
中途半端な戦略では競争優位が確立できないリスクがあります。
アンゾフの成長マトリクス
アンゾフの成長マトリクスとは、企業が成長戦略を策定する際に用いるフレームワークで、「市場」と「製品」の2つの軸を「既存」と「新規」に分けて組み合わせ、4つの成長戦略を導き出すものです。
| 戦略名 | 市場 | 製品 |
| 市場浸透 | 既存 | 既存 |
| 新市場開拓 | 新規 | 既存 |
| 新製品開発 | 既存 | 新規 |
| 多角化 | 新規 | 新規 |
既存事業が伸び悩んでいるときや新規事業のプランニング時など、成長の方向性を検討する際に有効です。
事業の現状や外部環境を踏まえ、どの成長戦略に注力すべきかを客観的に判断できます。
4. 戦略実行
戦略実行の際に活用するフレームワークを説明します。
策定した戦略を具体的な行動計画に落とし込み、組織体制や必要なリソースを配分して実行に移す際に役立ちます。
7Sフレームワーク
7Sフレームワークとは組織や企業の現状分析、経営戦略の実行力強化に役立つフレームワークです。
企業の成長を支える7つの要素を「ハード要素」と「ソフト要素」に分け、組織全体を俯瞰的に分析します。
| ハード要素 | ・戦略（Strategy） ・組織構造（Structure） ・システム（System） |
| ソフト要素 | ・共通の価値観（Shared Values） ・スキル（Skill） ・スタッフ（Staff） ・スタイル（Style） |
「共通の価値観」は他の6要素の中心に位置し、全体の統一感や方向性を決定づける役割を担います。
7つの経営資源の観点から組織が戦略を実行できる体制になっているかを分析し、必要な組織改革やリソース配分を検討します。
PPM分析
PPM分析は、企業が複数の事業や製品を展開する際に、経営資源をどこにどれだけ配分すべきかを判断するためのフレームワークです。
| カテゴリー | 市場成長率 | 市場占有率 | 戦略方針 |
| 花形（Star） | 高い | 高い | 積極的な投資でシェアの維持・拡大 |
| 金のなる木（Cash Cow） | 低い | 高い | 投資を抑えつつ利益を最大化 |
| 問題児（Question Mark） | 高い | 低い | シェア拡大か撤退かを見極める |
| 負け犬（Dog） | 低い | 低い | 撤退・縮小・再編を検討 |
自社の全体像を俯瞰し、バランスの取れた収益構造や成長戦略を描けます。
事業間のシナジーや社会的価値など、PPM分析だけでは評価しきれない側面もあるため、SWOT分析やバリューチェーン分析などと併用しましょう。
5. 評価・戦略の調整
評価・戦略の調整で用いられるフレームワークはPDCAサイクルです。
PDCAサイクルは以下の4段階を繰り返します。
- Plan（計画）
- Do（実行）
- Check（評価）
- Action（改善）
PDCAサイクルを回して戦略の実行状況を定期的に評価し、必要に応じて改善・調整を行います。
戦略の進捗や成果を客観的に把握し、柔軟に調整できます。
経営戦略をフレームワークで作る際の注意点
経営戦略をフレームワークで作る注意点を説明します。
フレームワークを活用する手段と目的を混同せず、現場の実態や環境変化を踏まえて選択しましょう。
1. フレームワークの作成が目的化しないようにする
フレームワークはあくまで戦略策定の手段であり、使うこと自体が目的になってしまうと本質的な戦略立案から逸れてしまいます。
分析そのものに時間をかけ過ぎて、意思決定や行動計画が疎かになるリスクもあります。
形だけの戦略立案・改善にならないようにしましょう。
2. 目的や事業内容に合ったフレームワークを選ぶ
フレームワークには多くの種類があり、企業の規模や業界、課題によって適したものが異なります。
自社の現状や目的に合わないフレームワークを選ぶと、的外れな分析や誤った戦略につながる可能性があります。
万能なフレームワークは存在しないため、必要に応じて複数を組み合わせることも検討しましょう。
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3. 実態や事実に即した内容で分析する
フレームワークによる分析が机上の空論にならないよう、現場の実態やデータ、関係者の意見を反映させることが大切です。
フレームワークを活用することで、主観や思い込みによる誤った判断や戦略ミスを防ぎ、客観的で信頼性の高い意思決定につなげられます。
事実に即した分析は、関係者やステークホルダーに対しても納得感や信頼性を与えます。
4. 環境変化に応じて見直す
市場や業界、社内体制の変化により、過去の分析や戦略が陳腐化することがあります。
ビジネス環境は変化し続けているため、フレームワークによる分析結果も定期的に見直し、必要に応じて戦略を再構築しましょう。
定期的な見直しにより最新の市場動向や競合状況を的確に捉えられます。
経営戦略策定はフレームワークで効率化を目指そう
経営戦略策定にフレームワークを使えば複雑な情報や課題を構造的に整理でき、思考時間が短縮されるだけでなく、考えるべき順序や視点が明確になります。
組織内で共通の指標や観点を持つことで関係者間の認識を統一しやすく、合意形成やリソース配分も円滑に進むでしょう。
変化の激しいビジネス環境においては、フレームワークによる効率的な戦略策定が競争力維持の鍵となります。
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