事業戦略の立て方では現状分析が大事です。
事業戦略を策定する際に他社と明確に差別化することができていれば、より確実に目標達成することができるようになります。
この記事で紹介するマーケティング分析のフレームワークを使うことで、自社と競合他社、マクロ環境などの分析ができますので、ぜひ活用し効率的に事業戦略を策定してください。
事業戦略とは?簡単に説明
事業戦略とは、自社の事業目標を達成するために決める方向性や計画のことです。
その事業で何を目指すのかや、なぜ実施するのかなどを明確にすることで、事業の方向性が決まります。
事業戦略とよく似た言葉に経営戦略と機能戦略があります。それぞれの意味の違いを説明しましょう。
1. 経営戦略との違い
経営戦略は、全社戦略や組織戦略とも言われています。
会社全体の目標を達成するための基本的な方針や方向性のことです。
経営理念やビジョンをもとに組織の方向性を決めます。
事業戦略は各事業ごとに方向性を決めますが、経営戦略は全社を横断して戦略を立案します。
経営戦略とマーケティングの違いとは?構成要素と関わりをわかりやすく解説2. 機能戦略との違い
機能戦略は事業に必要な機能ごとに策定する戦略です。
マーケティング戦略や営業戦略、生産戦略などが機能戦略となります。
1つの事業に複数の機能があり、事業戦略で設定した方向性に基づいてそれぞれの機能戦略を策定します。
以上のように、経営理念をトップにして経営戦略があり、その下に事業戦略、機能戦略があるという位置づけです。
すべての戦略は繋がっており、方向性や目標が一貫している必要があります。
事業戦略の立て方5ステップ
事業戦略を立案する方法を5ステップで説明します。
- 事業目標を立てる
- 現状分析をする
- 事業の方向性を決める
- 事業戦略が実現するか見極める
- 実際の施策に落とし込み実行する
効果のある事業戦略を策定するためには、客観的な分析と評価が重要です。
この5ステップをもとに自社の事業戦略を立ててみましょう。
1. 事業目標を立てる
事業を行う目的や方向性を明確にして、事業で達成すべき目標やビジョンを設定します。
事業目標を設定する際は、SMARTの法則というフレームワークが便利です。
SMARTの法則は、目標に必要な5つの要素を表しています。
- 具体的な(Specific)
- 測定可能な(Measurable)
- 達成可能な(Achievable)
- 関連性のある(Related)
- 期限のある(Time-bound)
目標設定に数値を用いることで、判断基準が明確になります。
経営理念や経営戦略と関連性のある目標を設定しましょう。
2. 現状分析をする
自社の現状分析を行い、目標との差を認識します。
分析すれば現状から目標を達成するのに必要な行動や戦術が見えてくるでしょう。
現状分析には内部環境分析と外部環境分析があります。
内部環境は自社の内部に関する情報で、外部環境は自社を取り巻く周囲の環境のことです。
後述するVRIO分析やPEST分析などの環境分析に使うフレームワークを活用しましょう。
3. 事業の方向性を決める
外部環境と内部環境を分析すると、自社の強みを活かせる市場を特定でき、自社のアクションの方向性が決められます。
クロスSWOT分析により、最大の機会をつかむために必要な自社の強みは何かや、自社にとってマイナスになる外部環境でも自社の強みを活かせないかなどを考えます。
環境によって様々な可能性が生まれるため、複数の方向性を検討することが大事です。
4. 事業戦略が実現可能か見極める
複数の事業戦略の実現可能性を確認します。
事業戦略のメリットだけでなく、コストやリスクなどのデメリットも含めて総合的に判断しましょう。
事業戦略が実現可能かどうかを評価することをフィジビリティスタディと言います。
実現可能度の高い事業戦略を客観的に選ぶことが大切です。
5. 実際の施策に落とし込み実行する
選択した事業戦略のもとで、現場が行動するために具体的な施策を決める必要があります。
施策は複数考えられるので、それぞれのプラス面とマイナス面を鑑みて優先順位の高いものから順番に実行します。
実行した後は効果を検証し、改善を加えることが大事です。
事業戦略立て方のポイント4つ
事業戦略を立てる際のポイントは以下の4点です。
- 自社の競争優位性と強みを生かす
- トレンドや市場の変化を敏感に察知する
- QCDの要素を実現できるか考える
- フレームワークを過信しない
ポイントを押さえて効果的な事業戦略を策定しましょう。
1. 自社の競争優位性や強みを生かす
自社の事業を成功させるためには、競合よりもシェアを広げ競争に勝たなければなりません。
競合他社との差別化が競争優位性を高めます。
商品・サービスの特長やアフターサービスなどの自社の強みを追求することが大事です。
自社商品・サービスと競合を比較し競争優位性や強みを生かした事業戦略にすることで、成果を出しやすい事業戦略を作れます。
2. トレンドや市場の変化を敏感に察知する
最近は外部環境の変化が早く、予測が困難だと言われています。
そのため、事業戦略を立てる際にトレンドや市場の変化を敏感に察知し、戦略に取り入れることが大事です。
時代の変化に合わせることで機会を上手く掴み、事業の成長が見込めます。
3. QCDの要素を実現できるか考える
QCDとは品質(Quality)・コスト(Cost)・納期(Delivery)の3つの要素を示しています。
商品・サービスが顧客の期待を満たす品質であり、提供する際には低コストで納期が守られていることが重要です。
QCDの要素が実現できると、顧客満足度や顧客からの信頼が高く、低コストで価格競争に勝てる事業となります。
4. フレームワークを過信しない
フレームワークを活用すると効率的に事業戦略を立てられます。
しかし、フレームワークはどの企業でも共通して使えるもののため、自社には当てはまらない部分が出てくる可能性があります。
自社の状況に合わせて使い分けたり、カスタマイズしたりすることが大事です。
事業戦略を立てるときに役立つフレームワーク7選
事業戦略を立案するときに活用するべき主なフレームワークを7種類紹介します。
- STP分析
- VRIO分析
- 3C分析
- 4P分析
- SWOT分析
- 5フォース分析
- PEST分析
フレームワークを使うと現状分析がしやすいため、積極的に活用しましょう。
1. STP分析
STP分析は新規事業の戦略立案や、現在の事業戦略を見直す際に活用するフレームワークです。
以下の3点を分析することで、優位な市場で自社の立ち位置を確立できます。
- セグメンテーション(Segmentation)
- ターゲティング(Targeting)
- ポジショニング(Positioning)
セグメンテーションとは市場の細分化です。
市場・顧客を属性やニーズなどでグループ分けします。
グループ分けした結果をもとに自社のターゲットを決め、どのような立ち位置(ポジション)を取るのかを決めます。
ポジショニングする際は、競合他社が弱く自社独自の価値を提供できる点を重視しましょう。
2. VRIO分析
VRIO分析は、自社の内部資源を分析し競争優位性を以下の4項目で評価するフレームワークです。
価値(Value) | ・経営資源に価値があるか・顧客ニーズに対応できるか |
希少性(Rarity) | ・経営資源が希少か・競合企業も保有しているか |
模倣可能性(Imitability) | ・真似されやすいか・高コストか |
組織(Organization) | ・組織が整っているか・属人性が低いか |
4つの中で高評価の項目が競争優位性のある要素です。
自社の競争力を維持するためには、競争優位性の高い要素を強化する事業戦略を立案する必要があります。
3. 3C分析
3C分析は市場環境を分析するフレームワークです。
3C分析によりKSF(重要成功要因)を導き出して事業戦略を立案します。
市場・顧客(Customer) | ・市場規模・成長性・流行・顧客ニーズ・購買プロセスなど |
競合(Competitor) | ・競合の強みと弱み・売上金額・ポジション・技術力・影響力など |
自社(Company) | ・経営資源・市場シェア・組織力・技術力・販売方法など |
3C分析で市場・顧客を分析するときは、PEST分析や5フォース分析を使います。
競合分析には4P分析、自社の分析はSWOT分析が役立ちます。
4. 4P分析
4P分析は商品・サービスの強みや弱みを分析し、競合との差別化ポイントを見つけます。
商品・サービス(Product) | ・ブランドイメージ・顧客ニーズ・提供できるメリット |
価格(Price) | ・利益率・ターゲットの支払い能力・価値に見合った価格・競合の価格 |
流通経路(Place) | ・販売場所・流通網の確保 |
販促(Promotion) | ・宣伝方法・集客方法 |
4P分析はマーケティングミックスとも言います。
それぞれの要素を独立して考えるのではなく、4つの要素の整合性が取れていることが重要です。
土台となる方向性やコンセプトを明確に設定し、戦略を練る必要があります。
5. SWOT分析
SWOT分析は、自社の内部環境と外部環境のプラス要因とマイナス要因を洗い出すフレームワークです。
新規事業の戦略立案や既存事業の状況確認に役立ちます。
- 強み(Strength)
- 弱み(Weakness)
- 機会(Opportunity)
- 脅威(Threat)
SWOT分析で要素を出せば、強みを活かして機会を掴む戦略や弱みを改善する戦略などを立てられます。
SWOT分析によって自社が重点的に取り組むべき目標がわかります。
6. 5フォース分析
5フォース分析は、市場で脅威となる5つの要因を分析するフレームワークです。
事業戦略を策定する際の市場分析手法として活用されています。
既存競合他社 | ・競合の数 ・市場の成長率 ・知名度 ・ブランド力 ・資金力 |
新規参入者 | ・市場規模 ・新規参入者の技術力 ・ブランド力 |
代替品の存在 | ・自社製品との違い ・コスト ・乗り換える際の手間 |
買い手の交渉力 | ・価格設定 ・競合他社の状況 ・価格競争の有無 |
売り手の交渉力 | ・サプライヤーの数 ・自社との力関係 ・乗り換える際のコスト |
5フォース分析により、自社の強みや競争力を把握できます。
新規事業を立ち上げる際に参入すべきかどうかの判断や、収益性の上がらない事業を撤退すべきかの判断がしやすくなります。
7. PEST分析
PEST分析は外部環境のうち、中長期的に影響を及ぼすマクロ環境を分析するフレームワークです。
政治(Politics) | ・法改正 ・規制緩和 ・税制 ・政権交代 ・補助金制度など |
経済(Economy) | ・物価 ・株価 ・外国為替 ・経済成長率 ・景気動向など |
社会(Society) | ・人口 ・流行 ・ライフスタイル ・文化 ・慣習 ・宗教的背景など |
技術(Technology) | ・IT技術 ・AR ・MR ・VR ・ビッグデータ ・仮想通貨 ・知的財産など |
PEST分析を行うことで市場の変化を予測し、事業戦略の方向性を明確にします。
市場の変化によるリスクだけでなく、自社の強みを活かしたビジネスチャンスを掴める可能性もあります。
事業戦略を立てて会社全体で事業への理解を深めよう
この記事では事業戦略の立て方とフレームワークについて説明しました。
事業戦略は自社の事業を成長させるために必要なものです。
フレームワークは環境分析や自社の現状分析に役立つため積極的に活用しましょう。
事業戦略は経営戦略に基づいて策定するため、一貫性のある方向性を決めなければなりません。
自社の経営資源を効果的に活用して競合企業に競争で勝つためだけでなく、会社全体で事業への理解を深めるためにも事業戦略の立案が重要です。
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