ブランディングで差別化を図るには、ターゲットの明確化・ブランドのポジショニング・ブランドアイデンティティの確立・一貫したブランドメッセージ・適切なタッチポイントの設計といった要素が必要です。
差別化を実現するブランディング戦略のポイントとして、長期的な視点、クリエイティブ制作を目的化しないこと、戦略と戦術を連動させることが挙げられます。
具体的な戦略の立て方とあわせて見ていきましょう。
ブランディングとは
ブランディングとは、企業や商品に関する統一されたイメージを打ち出し、広く認知してもらうための取り組みを指します。
特定のイメージが浸透することにより、多額の広告宣伝費をかけることなく安定的な収益を確保できる点が大きなメリットです。
ブランディングは自社の競争優位性を高め、競合他社との差別化を図る意味においても有効な施策といえます。
一方で、差別化の効果を発揮する水準に達するには、徹底したブランディング戦略と施策の着実な実行が不可欠です。
ブランディングで差別化を実現するために必要な要素
ブランディングで差別化を実現するためには、具体的にどのような要素が求められるのでしょうか。
差別化を実現するために必要な主な要素は次の5点です。
ターゲットの明確化
ブランディングを成功させるには、「誰に」イメージを浸透させるのかを明確にする必要があります。
例えば、20代女性と50代男性では考え方や価値観、好みが大きく異なるように、ニーズに合わせて訴求する必要があるからです。
ターゲットを見誤ると、発信するメッセージが響かない・刺さらない原因となるため慎重に見極める必要があります。
自社や自社が扱う商品に関心を寄せる顧客層を把握した上で、ターゲットを明確化しましょう。
ブランドのポジショニング
自社ブランドのポジショニング(立ち位置)も、ブランディング戦略を構築する上で非常に重要な要素の1つです。
市場や業界の中で自社にどのような強みがあり、何がアピール材料になるのかを十分に検討する必要があります。
消費者が感じ取るイメージと、自社が打ち出したい強みや特徴との間にギャップがあると、メッセージがうまく伝わりません。
消費者の視点に立ち、自社ブランドの独自のポジショニングを模索しましょう。
ポジショニング戦略の立て方と成功に必要な5つのポイントブランドアイデンティティの確立
ブランドアイデンティティとは、消費者に抱いてもらいたい企業・商品のイメージのことを指します。
ブランドアイデンティティは「ブランドコンセプト」と混同されやすいため注意してください。
- ブランドコンセプト:ブランドの根底にある指針や本質的な考え方
- ブランドアイデンティティ:ブランドの独自性や特徴の統一された表現方法
ブランドコンセプトを五感に訴え、伝えていくための手段としてブランドアイデンティティが必要になるのです。
多くの人にとって繰り返し目にしたもの・接したものの記憶が強く残り、印象づけられます。
ブランドアイデンティティが確立されていることは、「印象づける」プロセスにおいて非常に重要な役割を果たすのです。
一貫したブランドメッセージ
ブランドアイデンティティを浸透させるには、ブランドが発信するメッセージが首尾一貫していることが重要です。
メッセージはキャッチコピーなどの言語化されたものに限らず、ロゴやデザイン、カラーなどの視覚的な要素も含みます。
一貫したメッセージを発信し続けることにより、消費者の間に特定のイメージを浸透させることが可能になるのです。
ブランドメッセージの統一はロゴの作成といった表層的な要素に留まらず、コンセプトのレベルから統一されている必要があります。
ブランドとして打ち出していきたい価値観や世界観を確立しておくことが重要です。
適切なタッチポイントの設計
ブランドアイデンティティやブランドメッセージがどれほど作り込まれていても、適切に伝える手段がなければ浸透しません。
ターゲットにメッセージを伝え、ブランドを知ってもらう機会のことを「タッチポイント」といいます。
消費者がブランドと接する場面は多種多様です。
- 企業名や商品名を広告で見かける
- 店頭で商品パッケージを目にする
- SNS上で企業や商品に関する話題が目に留まる
- 贈答品として商品をプレゼントされる
- 人が持っているもの・使っている様子を見かける
- ECサイトで商品紹介や商品レビューを目にする
ターゲットに適したタッチポイントを設定することは、ブランディングを成功させる上で重要な要素の1つです。
ターゲットのライフスタイルや行動パターンを想定し、適切なタッチポイントを設計する必要があります。
ブランディングで差別化を実現する戦略の立て方
ブランディングで他社との差別化を実現するための戦略の立て方について解説します。
差別化を図るにはエッジの効いたブランディング戦略が不可欠です。
次に挙げる8つのプロセスを着実に実行していきましょう。
1. ターゲット顧客を特定する
差別化を実現するには、ターゲット顧客を明確に特定することが非常に重要です。
一般的に、ターゲット層が絞り込まれるほど訴求の解像度が高まります。
具体的には、次のような手法を用いてターゲット顧客が「誰」なのかを明らかにしていきましょう。
- 顧客の属性(年齢・性別・居住地・職業・年収など)やライフスタイルを調査する
- 既存顧客のデータを元に、利用率の高い顧客の共通点を把握する
- 競合他社の顧客層に見られる傾向から、自社のターゲットとの違いを分析する
- 多くの顧客が抱える課題や問題点を分析し、解決策を提供できる相手を特定する
ターゲットを狭めすぎると訴求可能な見込み顧客が減ってしまうのでは?と不安に感じるかもしれません。
実際には、核となるターゲット顧客に付随して類似層が関心を寄せるようになるため、特に問題はないケースが大半です。
ターゲットを大胆に絞り込み、ブランド価値を届けたい相手を特定してください。
2. 競合分析を行う
差別化を実現するには、入念な競合分析が欠かせません。
競合他社を先入観を排除して多角的に調査を実施し、抜け漏れのないよう特徴を捉えましょう。
- 各社のプロダクトやサービスの主な特徴・価格・セールスポイントを確認する
- 市場調査の結果から、競合他社の顧客が求めている価値や機能、強みを把握する
- 従業員の視点で競合分析を実施し、組織内部から見た場合の差別化ポイントを探る
- 顧客アンケートを実施し、自社と競合他社の商品について感想やイメージを回答してもらう
競合分析を進める中で、自社が想定していたイメージと顧客のイメージが食い違っていた場合には要注意です。
自社ブランドを打ち出す際、顧客の感覚と自社の感覚にズレが生じるポイントとなりかねません。
競合分析を入念に実施することは、自社や自社商品を客観視することでもあるのです。
競合調査を進める方法は?調査項目やフレームワークも解説3. ブランドの立ち位置を明確にする
差別化を成功させるための重要な要素の1つに「独自性」が挙げられます。
簡単に言えば、他社が打ち出していない特徴を自社が打ち出すことで独自性が強調されるのです。
競合と横並びになるのを避けるためにも、ブランドの立ち位置を明確にし、自社ならではのポジションを確立する必要があります。
- 自社のプロダクト・サービスに特有の強みや特徴は何かを深掘りする
- 競合他社にはなく、自社にはある強みや特徴を探る
- 感情に訴えるブランドストーリーを構築し、ストーリーに即した世界観を打ち出す
- 社会貢献活動やCSRに注力することにより、社会的意義を際立たせる
4. ブランドの理念や価値を明文化する
確固としたブランドの理念や価値が構築されていたとしても、伝わる形になっていなければ認知されません。
理念や価値は明文化し、まずは従業員間で共有しておくことが非常に重要です。
従業員に自社のブランドを浸透させ、価値を理解してもらうことをインナーブランディングといいます。
差別化を実現するには、各従業員が本心から「自社商品には価値がある」と感じていることが不可欠です。
ブランドブックを制作したり、象徴的なキャッチコピーを掲げたりすることで、ブランドの理念や価値を言葉に表しましょう。
5. ブランド要素(ロゴ・カラー・ストーリー)の構築
ブランドロゴやブランドカラー、ブランドストーリーといった各要素は、差別化の強力な武器となります。
インパクトのあるロゴやパッケージデザインは、ブランドの象徴となり得るからです。
AppleやAmazonといったブランドのロゴを誰もが容易に想起できることからも、ブランド要素の重要性がよく分かります。
ブランドストーリーに関しても、必ずしも文字ベースで語られる必要はありません。
映像や音楽、象徴的な写真やイラストによってブランドストーリーを表現してもよいのです。
生活者の心に残り、記憶に留まるブランド要素は、差別化の重要な柱となるでしょう。
6. コミュニケーション戦略の策定
ブランディングにおけるコミュニケーションとは、企業が発信するメッセージの伝え方や顧客の反応を受け取る方法を表しています。
生活者がどのような状況・タイミングでメッセージを受け取り、フィードバックをどのように送るのかを決めておくことが重要です。
ターゲット顧客が日常的に触れている情報や、よく閲覧している媒体の調査が必要になるのは言うまでもありません。
ターゲットのライフスタイルや行動パターンを十分に調査し、現実的にリーチするコミュニケーション方法を確立しましょう。
7. 施策への落とし込み
ブランド要素とコミュニケーション戦略が決まったら、具体的なプロモーション施策へと落とし込んでいきましょう。
選定した媒体を通じてどのような内容をどの程度の頻度でメッセージを届けるのか、明確に決めておくことが大切です。
施策へ落とし込む際には、ブランドの知覚価値と識別記号の連続性に注意しましょう。
- 知覚価値:ブランドから想起される印象やイメージ(ベネフィット・カテゴリなど)
- 識別記号:ブランドを五感で想起させる仕掛け(ロゴ・カラー・デザインなど)
知覚価値と識別記号が常に一致することにより、ブランドの認知が浸透していきます。
両者の一体感が保たれているか、注意を払って施策を構築するのがポイントです。
8. 実行と効果検証
ブランディング戦略を実行へと移したら、必ず効果検証を実施しましょう。
顧客へのアンケートやインタビューを通じて、浸透させたいイメージと実際の受容との間にずれが生じていないか確認します。
思うように認知が浸透していないようなら、原因を突き止めて改善策を講じることが大切です。
効果測定の際には、定量調査だけでなく定性調査も併せて実施してください。
グループインタビューやデプスインタビューなどを通じて、消費者の本音を引き出すのがポイントです。
ブランディングによる差別化を成功させる考え方のポイント
ブランディングを通じて差別化を成功させるには、いくつか押さえておくべきポイントがあります。
次に挙げる3点を押さえて、競合差別化の成功確度を高めましょう。
長期的な視点で取り組む
ブランディング戦略の効果が表れ、ブランドイメージが広く浸透するまでには一定の期間が必要です。
短期的な成果を求めるのではなく、長期的な視点で戦略の実行・改善に取り組む必要があります。
一過性のキャンペーンやプロモーションに終始するのではなく、施策と施策を線でつなげていくことが大切です。
施策を講じるごとに効果測定と分析を行い、次の施策に反省点を活かすことでPDCAサイクルを回していきましょう。
クリエイティブ制作を目的化しない
ブランディングによる差別化戦略で陥りやすい失敗として、クリエイティブ制作が目的化してしまうケースが挙げられます。
例えば、ロゴの刷新や検討の過程に長期間を費やし、新たなロゴが完成した時点で満足してしまうようなケースが典型です。
クリエイティブ制作は、あくまでもブランドを浸透させるための手段に過ぎません。
手段が目的化することのないよう、ブランディングの目的を十分に理解し、チーム内で共有しておくことが大切です。
戦略と戦術を連動させる
ブランディング戦略を綿密に構築したとしても、実際の戦術と連動していなければ効果が薄れてしまいます。
特にブランディング戦略の方針や目的が社内で共有されていない場合、食い違いが生じやすいため注意してください。
【戦略と戦術が食い違っている例】
- ブランディング戦略としては「洗練されたイメージ」を浸透させたい
- 営業担当者にとっては「他社よりも安い」ことのほうがアピールしやすい
- 結果として「安価なサービス」というイメージが独り歩きしてしまう
施策に落とし込む段階で、実際にプロモーションに携わる担当者を巻き込んでいくことが大切です。
施策実行に移ってからも、戦略と戦術の不一致が生じていないか注視していく必要があるでしょう。
まとめ
ブランディングの成功は、競合との差別化を図る上で重要な要素の1つです。
表層的な施策に留まらず、ブランドの本質的な価値を打ち出していくことで長期にわたり差別化の効果を発揮する可能性があります。
今回紹介した戦略構築の立て方やブランディングの考え方を参考に、ぜひ自社にとって最適な戦略・施策を構築してください。
「ブランディングと聞くと大企業の話ばかり。
自分の小さな事業ではブランディングはできないのかな…」
「成功している企業と自分の会社、一体どこが違うんだろう?」
そう感じたことがある方も多いのではないでしょうか。
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