コラム 
リブランディングとは、時代や市場環境の変化に応じて既存ブランドを再構築することです。
リブランディングは企業の持続的な成長に欠かせない取り組みであり、市場競争力の向上やブランド価値の再構築、組織の活性化などの目的があります。
リブランディングが必要か迷っている経営者に向けて、この記事では目的や適切な実施タイミング、具体的な進め方を解説します。
成功事例を参考に戦略を立案し、市場の競争力強化を目指しましょう。
リブランディングとはブランドの再構築プロセス
リブランディングとは、自社の既存ブランドを顧客ニーズや時代の変化に合わせて再構築するプロセスです。
完全に新しいブランドを作るのではなく、これまで培ってきた認知度や信頼感などのブランド資産を活用します。
ブランドイメージやポジショニング、コミュニケーション戦略などを再考し、顧客との関係を強化することで、時代の変化に柔軟に対応してブランドを持続的に成長させられるでしょう。
ブランディングとは？取り組むメリットや具体的な進め方について解説
リブランディングを行う3つの目的
リブランディングを行う目的を説明します。
自社の目的を明確にすることで、リブランディングの方向性や重点領域を適切に設定できます。
1. 市場競争力の向上
リブランディングを通じて競争力を向上させることは、企業の長期的な成功と持続可能な成長に不可欠です。
新しいイメージや価値提案により既存顧客の興味を再び引き付け、新規顧客の獲得にもつながります。
リブランディングでは市場の変化に柔軟に対応し、顧客ニーズを的確に捉えることが大事です。
2. ブランド価値の再構築
リブランディングで時代や市場環境の変化に適応することで、ブランドの魅力を維持・向上させられます。
長年にわたり築き上げてきたブランドも、社会のニーズや消費者の価値観の変化で魅力が薄れることがあります。
リブランディングによって自社のアイデンティティを見直し、現代の顧客に響くメッセージや価値提案の再構築が可能です。
3. 組織の活性化
リブランディングで新しいブランドビジョンや価値観ができると、従業員は新しい目標や使命感を見いだせてモチベーションの向上につながります。
ブランディングのプロセスは組織全体を巻き込む大きな変革です。
社内のコミュニケーションが活発化し、部門間の連携が強化されるため、組織の一体感を高められます。
リブランディングに適した4種類のタイミング
不適切なタイミングでのリブランディングは、ブランド価値の低下や顧客離れを招く恐れがあります。
適切なタイミングを選ぶことで、リスクを最小限に抑えるとともにリブランディングの効果を最大限に引き出せます。
1. 経営体制を変更する時
経営体制の変更時は、新たな方向性を内外に明確に示す良い機会です。
新しい経営陣のビジョンなどを反映したブランドイメージを構築することで、ステークホルダーに変革への決意を伝えられます。
市場での注目度を高めることで、ビジネスチャンスの拡大にもつながるでしょう。
社内では従業員の意識改革を促し、新体制へ円滑に適応できます。
2. 事業内容の変革がある時
企業が事業内容を大きく変える際、新しい方向性を周りに伝える必要があります。
企業は新しい考え方や目指す姿をリブランディングを通じて明確に示すことで、お客様や市場に変化を印象づけられます。
リブランディングによって新しい事業でも市場での競争力を高め、長期的に成長させられるのです。
3. ブランドイメージ刷新の必要がある時
時代の変化や消費者の価値観の変化により、かつては強力だったブランドイメージが陳腐化したり、否定的な印象を持たれたりする恐れがあります。
リブランディングを実施することで、企業は現代の顧客ニーズに合わせたイメージを再構築し、ブランドの魅力を蘇らせられます。
商品・サービスの再ポジショニングを行うことで、ブランドイメージを刷新し、競争優位性を確保できるでしょう。
4. 市場環境が変化した時
急速な技術革新や消費者ニーズの変化、新規参入企業の台頭などにより、既存のブランドイメージや価値提案が時代に合わなくなる可能性があります。
市場環境の変化に適応できない企業は、次第に競争力を失っていくでしょう。
リブランディングによって変化する環境に柔軟に対応できる企業体質を作り上げることで、長期的な事業の継続性を確保できます。
リブランディングの流れ5ステップ
リブランディングの流れを5ステップで説明します。
各段階を把握することで場当たり的な対応を避け、一貫性のある戦略を立案・実行できます。
1. 現状の分析を行う
ブランドの強み・弱みや市場での立ち位置、顧客の認識などを客観的に把握します。
現状分析の主な要素と分析方法を紹介します。
| ブランド認知度 | ・一般消費者へのアンケート調査 ・SNSでのブランドの感情分析 |
| 顧客満足度 | ・既存顧客へのインタビューやアンケート ・カスタマーサポートへの問い合わせ内容を分析 |
| ポジショニング | ・SWOT分析 ・競合他社との比較 |
| 財務パフォーマンス | ・財務指標の分析 ・商品／サービスの収益性分析 |
| 内部 | ・従業員へのアンケートやインタビュー ・部門横断的なワークショップ |
| トレンド | ・業界のトレンドや技術革新を調査 ・消費者の行動分析 |
ブランドの現状を多角的に分析し、リブランディングの必要性と方向性を明確にしましょう。
2. 課題を洗い出す
現状分析の結果をもとに、ブランドが直面している問題点や改善すべき点を特定します。
内部と外部の両方の視点から課題を洗い出しましょう。
| 内部の視点 | ・社内アンケートやインタビュー ・部門間の対立や意見の相違を特定 ・経営層による自社の課題の認識 |
| 外部の視点 | ・顧客からのフィードバック ・競合分析 ・市場トレンドの分析 |
課題を明確にすることで、リブランディングの必要性と方向性がわかります。
3. リブランディング戦略を立案する
課題解決に向けたリブランディング戦略を立案します。
- 企業の理念やミッション・ビジョン・バリューを再定義
- 現在のメインターゲットを見直し、ペルソナを作成
- ロゴ・カラーパレットなどのビジュアルアイデンティティを再設計
- 新しいブランドメッセージを伝えるための広告キャンペーンを企画
- リブランディングの実施スケジュールを策定
リブランディング戦略の立案では、企業の独自性や市場環境を十分に考慮し、長期的な視点で取り組むことが重要です。
柔軟性を持たせ、市場の反応に応じて適宜調整を行いましょう。
4. 社内に浸透させる
社内浸透のプロセスでは全従業員がリブランディングの意義を理解し、日々の業務とどのように結びつくかを明確に認識することが重要です。
- ブランドアンバサダーの選出
- 教育プログラムの実施
- 社内報などでの情報発信
- 社内文書や名刺のデザイン変更
- 新ブランド戦略に沿った評価制度の構築
一方的な情報伝達ではなく、経営陣自身が率先してブランド価値を体現し、従業員の声にも耳を傾けることで効率的に浸透させられます。
5. 社外に展開していく
新しいブランドイメージを市場に浸透させるため、社外に展開していきます。
- 公式ローンチイベント
- プレスリリース
- ティーザーキャンペーン
- WebサイトやSNSアカウントのリニューアル
- 複数チャネルでの広告
社外展開では一貫性のあるメッセージと体験を提供することが重要です。
段階的なアプローチを取り、市場の反応を見ながら柔軟に対応することで、効果的に新しいブランドを周知できます。
リブランディングを行った企業の事例5選
他社の成功事例から効果的なリブランディング戦略の方法を学べます。
自社のリブランド戦略の参考にしてください。
1. ヤンマーホールディングス
ヤンマーホールディングスは2012年の創業100周年を機にリブランディングを行いました。
新しいロゴやブランドステートメントを作成し、マスコットキャラクター「ヤン坊マー坊」の新デザインを一般投票で決めるなどを行い、新しいブランドを社内外に浸透させました。
農業機器メーカーという古いイメージから脱却し、グローバルでの事業展開に合わせたブランドイメージの統一に成功しています。
2. 湖池屋
湖池屋は、2016年の新社長就任を機にリブランディングを行いました。
「KOIKEYA PRIDE POTATO」は、プレミアム感のあるおいしいポテトチップスとして売り出され、発売1か月で品切れ状態になるほどの人気を獲得しています。
商品の魅力を端的に伝えることに注力したことで、消費者にブランドメッセージが伝わりやすくなったと同時に、ヒット商品を生み出すことにもなりました。
3. バーバリー
バーバリーは1856年に設立された伝統的なファッションブランドです。
ブランドイメージの低下に苦しみ、2009年にいち早くデジタル戦略を採用しました。
メインターゲットを20代前半に設定し、SNSを活用したマーケティングを実施しています。
ファッションショーのライブ配信では、ショー終了直後からECサイトで新商品の予約注文を可能にするなど、SNSを通じてブランドへの親近感を醸成したことで、新たな顧客層の獲得に成功しました。
4. スターバックス
スターバックスはコーヒーショップのイメージを超えて、幅広い製品を提供する企業へと進化するため、2011年にリブランディングを行いました。
リブランディングではロゴから「Starbucks Coffee」の文字を削除し、コーヒー以外の飲料や食品の提供を強化しています。
ドライブスルー店舗やモバイル注文などの新しい販売形態を導入し、顧客ニーズの変化に合わせた柔軟な対応により、顧客基盤の拡大につながりました。
5. かっぱ寿司
かっぱ寿司は「安かろう悪かろう」というイメージを払拭し、他社との差別化を実施するためにリブランディングを行いました。
ロゴデザインを従来の河童のキャラクターから、積み重なったお皿のグラフィックに変更し、おしゃれで清潔感のある店舗デザインに一新しています。
新メニューの投入やブランドイメージ強化のためのイベント開催も行い、包括的にリブランディングを進めて競争力を向上させました。
リブランディングとは競争力維持のために必要な戦略
リブランディングは、自社が市場競争力を維持し、持続的な成長を実現するために不可欠な戦略です。
時代の変化や顧客ニーズの進化に伴い、かつて強力だったブランドイメージも価値を失う可能性があります。
リブランディングの実施によって自社のアイデンティティを再定義し、現代の消費者に響くメッセージや価値提案を再構築することで、顧客との関係を強化できるでしょう。
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