ポジショニングはマーケティングを成功させるうえで、重要な要素です。
ポジショニングを行うことで、マーケティング戦略において競合他社と差別化を図り、自社独自の価値を明確に示せます。
ポジショニングマップを作成すると、競合他社と自社の強みや弱みを比較でき、自社独自のポジションをとりやすくなります。
この記事では、ポジショニング戦略の立案方法やポジショニングマップの作り方、成功事例などを解説します。
ポジショニングとは
ポジショニングは、競合他社の製品やサービスと差別化を図り、市場における自社製品やサービスの立ち位置を戦略的に決定することです。
ポジショニングにより、自社のコンセプトや顧客に提供する価値が明確化します。
適切なポジショニングを行うことで、競争が激しい市場においても顧客から選ばれる商品・サービスを提供できます。
ポジショニング戦略を立案する際の5つのポイント
ポジショニング戦略を立てるには、STP分析が役立ちます。
STP分析はセグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングの3つの要素を分析することで、マーケティングに役立てられるフレームワークです。
ここでは、STP分析を踏まえて、ポジショニング戦略を立案する際に意識すべきポイントを説明します。
- 市場をセグメントに分ける
- ターゲットの軸を決める
- 競合他社との差別化要素を明確にする
- 企業理念などとの一貫性を維持する
- 顧客視点を重視する
1. 市場をセグメントに分ける
市場全体を共通の特性を持つ顧客グループ(セグメント)に分類します(セグメンテーション)。
セグメントは4種類の変数で分けられます。
地理的変数 | ・地域 ・都市の規模 ・気候 など |
人口動態変数 | ・年齢 ・性別 ・家族構成 ・収入 ・職業 ・学歴 など |
心理的変数 | ・パーソナリティ ・価値観 ・ライフスタイル ・趣味 ・関心事 など |
行動変数 | ・購買行動 ・製品の使用状況 ・ブランドロイヤルティ など |
セグメンテーションでは、4つのRを基準にして評価します。
- Rank(優先順位):経営戦略上の優先順位に基づいているか
- Realistic(規模の有効性):セグメントの規模が十分か
- Reachable(到達可能性):マーケティング活動が届くか
- Responsive(反応性):セグメントが施策に反応するか
4Rの評価の良いセグメントが自社にとって最適な市場です。
2. ターゲットの軸を決める
セグメンテーションで細分化した市場の中から、自社が実際に狙うべきターゲットを選定します。
ターゲティングをする際には、3種類のマーケティングパターンから対象の幅を選択します。
- 集中型マーケティング:特定のセグメントに絞り込む
- 差別化マーケティング:複数のセグメントを対象とし、それぞれに異なるアプローチを取る
- 非差別化マーケティング:全セグメントを対象とし、同じアプローチを取る
ペルソナを設計し、ターゲットの軸を具体的に設定することで、顧客の心理や行動パターンに合わせた訴求が可能となります。
3. 競合他社との差別化要素を明確にする
自社と競合他社の強みと弱みの分析を行います。分析には4P分析やSWOT分析が役立ちます。
4P分析 | ・Product(製品) ・Price(価格) ・Place(流通) ・Promotion(プロモーション) 自社と競合他社の特徴や市場での位置づけを明確化 |
SWOT分析 | ・Strength(強み) ・Weakness(弱み) ・Opportunity(機会) ・Threat(脅威) 自社の独自性や改善点を把握 |
分析結果をもとに、顧客ニーズがあり競合他社の提供していない要素で、自社の強みを最大限に活かせる領域を構築しましょう。
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企業理念と実際のマーケティング活動やブランディングが一致していることが、ポジショニング戦略には重要です。
企業理念やビジョンはポジショニングの基盤です。
理念と行動のギャップが大きいと顧客の信頼を失い、ブランド価値の低下につながります。
理念に基づいたポジショニング戦略を実施し、必要に応じてマーケティングプロセスの見直しを行うことで、一貫性を維持できます。
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顧客視点を知るために、顧客の行動データの収集や顧客アンケート、インタビューを実施しましょう。
顧客の興味や購買行動パターン、商品に対する感情を把握できます。
顧客視点に立ったポジショニングは、顧客の共感を得やすく市場での競争優位性を高められます。
顧客の声を収集するときにコミュニケーションが生まれ、信頼関係の構築も可能です。
ポジショニングマップの作成方法5ステップ
ここでは、ポジショニングマップの作成手順を説明します。
- KBFを選定する
- 自社と競合他社を比較する
- マップの軸を決定する
- ポジショニングマップを作成する
- ポジショニングマップを分析する
ポジショニングマップとは、意味の異なる2つの軸で構成されたマトリクス上に、自社および競合他社の商品やサービスを配置した図表のことです。
自社と競合他社の相対的な位置関係を視覚的に表現でき、市場における各ブランドや商品のポジションを明確にします。
1. KBFを選定する
KBFとは「Key Buying Factor(重要購買決定要因)」の略です。
顧客層によってKBFが異なるため、ターゲットを絞り込みます。
市場動向や競合他社を分析し、KBFを決めましょう。
KBF選定には3C分析が有効です。
Customer(顧客) | 市場調査や消費者志向の分析 |
Competitor(競合) | 競合他社の分析 |
Company(自社) | 自社の強み・弱みの分析 |
Customerで市場を分析し、競合他社が弱く自社の強みになる点が顧客のKBFとなります。
2. 自社と競合他社を比較する
競合他社のWebサイトやSNSなどを分析し、最新情報や顧客とのやり取りなどを確認します。
口コミやレビュー、顧客アンケートなどから競合他社に対する顧客の評価も把握できます。
自社と競合他社を比較する際には各企業の強みと弱み、市場での立ち位置、将来性を総合的に評価し、自社の差別化要因や改善点を把握しましょう。
3. マップの軸を決定する
KBFの中で重要度が高い要素やターゲットのニーズなどによって軸が変わります。
選択の際には相関性の低い要素を選びましょう。
例えば価格と性能を軸にすると、価格が高い製品はたいてい性能が良く、性能が低いものは価格が安くなるためです。
機能や用途に関する軸、製品・サービスの価値に関する軸がよく使われています。
4. ポジショニングマップを作成する
決定した軸でマトリクスを作成し、自社と競合他社の製品・サービスを配置します。
円や楕円などの図形を使用してマッピングすると、視覚的にわかりやすくなります。
2軸以上で競合他社と比較したい場合は、ポジショニングマップを複数作成しましょう。
5. ポジショニングマップを分析する
ポジショニングマップ上の各社の位置関係から、空白エリアを特定します。
空白エリアはどの企業も市場でポジションを取っていないため、新たな市場機会となる可能性が高いです。
既存商品・サービスの改善や新商品開発により、現在のポジションから新しいポジションへ移動するための施策を検討しましょう。
市場環境や競合状況の変化に応じて、定期的にポジショニングマップを更新する必要があります。
ポジショニングの成功例5選
ポジショニングの成功例を5種類紹介します。
- シーブリーズ
- AKB48
- ワンダ モーニングショット
- Airbnb
- ザ・ボディショップ
どの事例も競合他社とは異なるターゲットやコンセプトを持っています。
顧客ニーズと自社商品・サービスの特徴が一致する点を強化することで差別化を図れます。
1. シーブリーズ
シーブリーズは昔、夏のレジャーやマリンスポーツの後に使うデオドラントとして20代〜30代の海に行く男性をターゲットにしていましたが、売上が伸び悩んでいました。
10代の女子高生をターゲットに変更し、学校生活などで汗のケアができるデオドラントという新しいポジションを確立しました。
ターゲットと商品の機能を合致させ使用シーンを拡大したことで、シーブリーズの売上は8倍に伸びています。
2. AKB48
AKB48は「会いに行けるアイドル」というコンセプトで売り出し、従来の手の届かないアイドル像を覆しました。
握手会などの1対1コミュニケーションを重視し、推しを応援するファン参加型の総選挙などにより、ファンとの距離感を縮めて強い絆を作りました。
AKB48のポジショニング戦略は、従来のアイドル像を刷新し、ファンとの距離感を縮めながら特別感も維持しています。
3. ワンダ モーニングショット
ワンダ モーニングショットは「朝に飲むコーヒー」という明確な時間帯を指定したポジショニングを確立しました。
「朝に飲むコーヒーはワンダ・モーニングショット」というメッセージを繰り返し発信して消費者の無意識に刷り込み、ブランディングを強化しています。
40〜50代の働く男性が忙しい朝でも簡単に買えるコーヒーとして、2017年に過去最高売上を達成しました。
4. Airbnb
Airbnbは「現地の人のように暮らす」というコンセプトで、旅行先で地元の生活を体験する機会を提供しています。
従来のホテルとは異なる宿泊体験を実現したことで、新しい市場を創出しました。
多くの宿泊施設では画一的な宿泊体験となることが多いですが、Airbnbでは城やツリーハウスのような個性的な宿泊施設も提供し、ユニークな宿泊体験を得られる点で差別化を図っています。
5. ザ・ボディショップ
ザ・ボディショップは創業当初から環境保護や人権問題に取り組み、サスティナブルな製品開発やフェアトレードプログラムを実施しています。
化粧品業界の中でサスティナブルであるというポジションを確立しました。
店舗でも、環境に配慮した素材や接着剤を使用せずにリサイクルしやすい構造を採用するなどして、単なる商品販売の場ではなく、ブランドの価値観や社会的責任を体現する場として店舗を位置づけています。
ポジショニングを確立してマーケティングを優位に進めよう
この記事では、ポジショニングを確立する方法やポジショニングマップの作り方、ポジショニングの成功例を紹介しました。
ポジショニングは競合他社との差別化を図り、顧客の心に独自の位置を築く戦略です。
明確なポジショニングを確立することで、ターゲット市場での存在感を高め、効果的なマーケティング活動が可能になります。
自社の強みを活かし、顧客ニーズに合致したポジショニングを見出すことが、マーケティング成功の鍵となるでしょう。
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